イギリスを代表する革靴「Church’s」の魅力とは?
イギリスの高級シューズブランド「Church’s 」。近年大幅な価格改定が行われ、なかなか手に取りにくくなっていますが、Church’sの革靴はいつかは手に入れたいと憧れるブランドですよね。そんなChurch’sですが、左右の区別がある靴を初めて製造したのがChurch’sだったということはご存じでしょうか?伝統を大切にしながらも新たに挑戦するブランドの姿勢がファンから熱い支持を集めているのです。
この記事では、創業から150年以上経っても愛され続けているChurch’sの歴史を紐解いていき、ブランドを代表する製造方法や人気モデルを紹介していきます。
Church’sとは?
Church’sを世界に知らしめたのは「伝統的な靴作りの技術」だけでなく「海外市場に向けたブランディング力」であり、企業から買収されることを上手くいかした、その事業戦略には脱帽です。そんなChurch’sの歴史を紐解きます。
出典 church-footwear.com/jp/ja.html
歴史
「トーマス・チャーチ」そして妻の「エリーザ」、息子の「アルフレッド」「ウィリアム」の一家によってイギリス・ノーサンプトンで始まりました。それ以前から靴作りの技術はトーマス氏の曽祖父「アンソニー・チャーチ」から代々受け継がれており、Church’sの原点となった工房を開業したのが1873年のことでした。
創業当初はカントリーブーツやサドルブーツ等、軍用靴を主に生産していました。そしてChurch’sはこの時期、人類における革新的な発明を行います。それが「左右非対称の靴」です。
当時、左右の区別がなく同じ形をした靴を履くのが当たり前とされていました。そこでChurch’sが発表したのが「アダプテッドブーツ」と呼ばれる、左右という概念のある靴。それだけでなく多様な幅(ウィズ)、素材、さらにはハーフサイズという前例のないサイズも発表し、1881年に開催された万国博覧会では金賞を授与されています。現在の靴の元となったのが、まさにChurch’sの発明なのです。
19世紀末頃から「アメリカでの靴産業の成長」を目の当たりにしたをきっかけに、海外進出を積極的に行うこととなります。1887年には近隣国であるヨーロッパへすでに進出しており、同時期に創業していた「John Lobb」や「EDWARD GREEN」よりも早い段階に海外市場へ可能性を見出していました。
転換期
海外進出を狙って戦略的に行動した結果、1907年にアメリカとカナダでChurch’sの販売が始まります。アメリカの小売業に向けて特別なラストを提供することで、Church’sの革靴が徐々に全国へと広がりました。このことを皮切りにブランドの成長の基盤のようなものが固まり、世界中へと浸透していきます。
1913年にはロイヤルプリンセスに贈呈する靴を制作する大役に任命され、1919年に現在の英国靴協会(SATRA)の原形となる組織の創設メンバーとして活動しました。第一次世界大戦が終わった頃にはすでに南米やインドにも進出しており、Church’sの名はさらに広がります。
1921年にはイギリス・ロンドンでショップをオープンし、ブランド初の婦人靴も発表します。さらに1930年にはアメリカ・ニューヨークのマディソンアヴェニューにもショップを展開。海外進出をより強固なものとしました。
1957年、会社は拡大を続けていきノーサンプトン・セントジェームズストリートに現在の本社である新工場を設立。その後は北米やイタリア、香港に支社も設立していきました。そんな輸出力の功績を讃え、エリザベス2世から産業部門の英国女王賞を1984年に受賞することになります。
PRADAグループへ
1999年、Church’sはPRADAグループによって買収されます。これは決して経営不振によるものではなく、ビジネスを拡大していきたいというChurch’s側の意思によるものでした。競合他社の靴メーカーよりもいち早く海外展開に目を付けていたChurch’sだからそこ、戦略的にPRADAという看板を利用し、結果事業の拡大に成功。
2001年にはミラノで新店舗を設立。2002年にパリやローマ、2008年以降では香港やシンガポールといったアジアでも展開をしていきました。2011年にはレディース靴専用のChurch’sもオープンしています。
革靴は創業当初から変わらず、1足につき250工程を8週間の時間を費やして制作されています。素材選びにも妥協は許さず、世界中から厳選した上質なレザーしか使用しないことでも有名です。職人たちの手作業で作られており、繊細なモノづくりのおかげで今でも多くのファンを獲得しています。
PRADAに買収されてからはデザインにも変化が。ブランドの精神を踏襲したクラシカルなスタイルに加えて、ややモダンチックになり、時代に合わせたアップデートが行われています。
Church’sの特徴
今でもファンが絶えない伝説的な「ラスト73」やChurch’s独自の素材である「ポリッシュドバインダーカーフ」。高級紳士靴メーカーとして世界中から愛されるChurch’sの魅力を紹介します。
グッドイヤーウェルト製法
19世紀後半に「チャールズ・グッドイヤー・ジュニア」によってアメリカで確立された機械による靴製法。それ以前は「ハンドソーン・ウェルト」と呼ばれる手縫いの製法が主流でした。
グッドイヤーウェルト製法はそれをベースとした「革靴のアッパーとソールを繋げる製法」の1つで、ミシンが開発されたことで大量生産が可能となりました。必要な工程やパーツが多い分、革靴に大きなメリットをもたらしてくれます。
まずは耐水性に優れている点。グッドイヤーウェルト製法の構造上、靴内側と外側に繋がる部分がないため水の侵入を防ぎ、雨の日でも安心して履くことができます。
そして「リブ」と呼ばれるT字型のパーツを軸に、各パーツがしっかりと取り付けられているため、耐久性にも優れています。アッパーとソールは直接縫い合わさっていないので、長年使って傷んでしまったソールを交換することも可能です。
さらに他の製法とは違い、グッドイヤーウェルト製法では内部にクッションとして、コルクを敷き詰めるスペースを十分に確保することができます。そのため履いていく度にそのコルクが足の形へと馴染み、快適な履き心地になっていくのです。
構造が複雑な分、他の製法の革靴よりも重量が増してしまいますが、それが返って振り子のように機能し、足を自然に前へ送り出すような役割を果たします。
外見では張り出したコバが特徴。革靴の淵部分に見られるディテールで、ほどよいラグジュアリーな印象を与えてくれます。
ラスト73
今でもファンが絶えない、廃盤ラストである「73」。1940年に登場し、Church’sの創業年1873年にちなんでその名前が付けられました。「コンサル」「チェットウィンド」「ディプロマット」「グラフトン」等、Church’sの名作シューズたちのラストとして用いられ、言わばブランドを代表するラストでしたが1999年に廃盤が決定。その後ラスト73を引き継ぐモデルとして2000年に「ラスト100」、そして2003年に「ラスト173」の発表がされました。
ノーズが長めで、フォルムはやや内側に湾曲している後継モデルに対し、ラスト73はノーズが間延びしておらず、少し膨らんだ横幅からつま先にかけて綺麗に狭まっていくバランスの取れたシルエットをしています。良い意味でもオーソドックスなラストでタイムレスな印象。また、トゥ部分はどちらもセミスクウェアな形をしており、オリジナルと後継モデルともに繋がりを見せています。
PRADAに買収される前のChurch’sは「OLD Church’s」と呼ばれており、中古品やデッドストックは今でも高値で取り引きされています。
ポリッシュドバインダーカーフ
この特殊なレザー素材はChurch’sが独自に開発したもの。雨の多いイギリスで、いかに革靴を快適に履くことができるのかという問題に焦点を当てた結果、機能的なポリッシュドバインダーカーフが誕生しました。
元となるカーフレザーに特別な樹脂をコーティングすることによって、従来のレザーのデメリットを払拭するような素材へとグレードアップ。革靴の天敵であった雨に強くなり、多少の水分であればレザーに浸透することなく弾いてくれます。また傷や汚れが付きにくく、それに加えて艶感が出やすいためお手入れが簡単なこともポイント。
コーティングと聞くと「ガラスレザー」を思い浮かべてしまいますが、ガラスレザーと比べるとレザーの質感に違いがあり、最高級なレザーとして知られるコードバン風な印象があります。以前は「ブックバインダーカーフ」と呼ばれていましたが、加工に使用する溶剤等が及ぼす環境や人体への影響を懸念したため材料を変更。結果、「ポリッシュドバインダーカーフ」として生まれ変わりました。
人気アイテム
名作揃いのChurch’sの人気アイテムをご紹介。イギリスの土地柄、雨天に強い革靴がラインナップされています。
SHANNON シャノン
1970年に誕生。アイルランド西部の町から名付けられた「シャノン」。Church’sの中でも名作と言われる革靴です。つま先部分はやや丸みを帯びたぽってりとしたシルエットで、無骨で重厚な雰囲気があります。外羽根の革靴はカジュアルなコーディネートにも合わせやすく、オンオフ問わず大活躍してくれます。
ポリッシュドバインダーカーフレザーが使われているので雨の日でも問題なく着用することが可能です。またシャノンは傑作スパイ映画「007」シリーズの主人公である「ジェームズ・ボンド」が愛用していたことでもお馴染み。同じくイギリスをテーマや舞台にした映画ということもあり、Church’sの革靴が作中に華を添えています。
DIPLOMAT ディプロマット
外交官という意味を持つ「ディプロマット」。上品な曲線を描いたフォルムがポイントの革靴です。ラストにはChurch’sの名品「73」の後継である「173」を採用。ユニークなフォルムのセミスクウェアトゥとノーズのほどよい長さは絶妙なバランスが保たれています。
特徴はアッパーに施されているメダリオン。この穴の装飾は美しいデザイン面に加えて、通気性の良さという機能面も兼ね備えています。内羽根セミブローグの革靴なため、オフィスカジュアルやパーティーなどのドレッシーな装いのシーンに活躍してくれます。
CONSUL コンサル
内羽根、オックスフォードという非常にシンプルな作りで作り上げられた「コンサル」。Church’sを代表するドレスシューズの1つです。ダブルステッチのキャップトゥデザインは普遍的ながらもエレガントさがあり、また張り出したコバ部分はとても英国靴らしさのあるディテールと言えます。
タイムレスに愛用できるそのデザインは冠婚葬祭でも問題なく着用可能。 シーンを選ばない革靴として重宝します。ちなみに多くのイギリス人大使や政治家たちがオックスフォードタイプの革靴を履いていたことに基づいて「コンサル(領事)」と名付けられました。
CHETWYND チェットウィンド
ディプロマットと同じくラスト173、メダリオン仕様の革靴。チェットウィンドでは、より穴の装飾が多いフルブローグとなっています。ファッション性に重きが置かれた革靴となっており、つま先にはウィングチップを採用。チェットウィンドは世界的にも有名なウィングチップモデルの革靴として知られています。
Church’sの他の革靴と比べるとカジュアルさがあり、オンデニムとも相性抜群。幅広い服装にフィットしてくれます。
BURWOOD バーウッド
上記のチェットウィンドと同じ内羽根、フルブローグのディテールを持つバーウッド。このようにChurch’sにはウィングチップの名作が2つもあります。両モデルの違いとして「使用している素材」が挙げられます。
バーウッドではアッパーがポリッシュドバインダーカーフ仕様で高級レザーと遜色ない表情を持ちながら、水に強い耐水性があります。ヒール部分には滑りにくいラバーを採用。濡れた地面でもしっかりとグリップしてくれる、雨の日に活躍してくれるギミックです。このようにカーフレザー・レザーソールであったチェットウィンドとは違い、バーウッドは「より雨に強い革靴」と言えます。
RYDER 3 ライダー3
Church’sのブーツラインであるライダーシリーズの代表「ライダー3」。スウェード素材を採用したチャッカブーツはカジュアルながらもシャープでドレススタイルな印象があります。スウェードはカーフレザー等と比べると起毛皮革であるため、デイリーケアが楽なのも嬉しいポイント。
シャノン同様に「007」の作中でも登場したブーツ。きれいめからラフなスタイリングまで、様々なコーディネートに対応してくれます。甲部分が高く設定されているのでサイズ感はややゆったりめ。そのためサイズ選びの際は注意が必要です。
GRAFTON グラフトン
外羽根、フルブローグ仕様の革靴。水の侵入を防ぐことに特化したストームウェルト製法とダブルソールの見た目はとてもボリュームがあり、重厚さが窺えます。タフなデザインは決して外見だけでなく、ポリッシュドバインダーカーフをアッパーに施す等しっかりと機能性もあります。
外羽根は内羽根と比べてカジュアルな革靴に分類されるので、タイドアップしたスタイルからカジュアルなスタイルまで幅広くフィットしてくれます。外羽根式フルブローグと言えば「Church’sのグラフトン」と評されるほど、メジャーな1足として知られています。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございました。創業時から変わらぬ伝統的なモノづくりを継続するChurch’sについて解説していきました。何十年と履き込んだお気に入りの革靴が傷んだ際、買い替えが必要となってしまいます。Church’sでは多少マイナーチェンジこそありますが、同じ靴を何十年も作り続けているため、お気に入りの同じ靴を購入できるという点も魅力です。是非お店で見かけた際は、お手に取って見てみてください。
モードスケープではChurch’sの買取を強化しています。アイテムの価値を適正に反映し、最高額を見出す査定をいたします。Church’sのアイテムを売りに出すか迷っている場合にも、是非モードスケープにご相談下さい。とりあえず値段だけ聞いて検討したいという場合は、LINE査定などで査定額を見積もることも可能です。お気軽にご相談ください。
Church’sのお買い取り案内ページはこちら
モードスケープではChurch’sの買取を強化しています。定番のShannonやConsulをはじめ、高い人気を誇るモデルが多数存在するChurch’sの靴を高価買取いたします。お買い取りをご検討の際は、お気軽にご相談ください。
Church’sの買取について
この記事を書いた人
小川剛司 (MODESCAPE 編集部)
ライター・ファッションモデル。学生時代のアルバイトからファッションの世界へ。大手セレクトショップの販売員、ECスタッフを経て、長年携わったアパレルの経験と知識を活かしWEBライターに。数々のファッションマガジンサイトで執筆を行い、メンズ・レディース問わずおしゃれを発信しています。現在は韓国を拠点にモデル活動しており、更なるファッション知識を探求中! Instagram:@t_t_k_k_s_s