モード界に歴史を刻んだ「フィービー・ファイロ」のCELINE時代について
2023年に自らの名前を冠した新たなブランド「PHOEBE PHILO」が始動し、世界中で注目を浴びている「フィービー・ファイロ」。これまでにChloeやCELINEのクリエイティブ・ディレクターを歴任してきた彼女ですが、特にCELINEでは「フィービー期」と呼ばれるフィービー・ファイロが手がけた時代が存在します。このフィービー期には数々の名作が誕生しており、今でも熱狂的なファンが多く絶大な支持を受けています。
では、フィービー・ファイロはCELINEにもたらしたものとは、またフィービー期にはどんな特徴があるのでしょうか?
この記事ではフィービー・ファイロのCELINE時代に焦点を当て、フィービー期について深堀をしていきます。そして、先ほど触れたフィービー期の名作アイテムもご紹介しますので、是非最後までお付き合いください。
フィービー期セリーヌとは?
フィービー・ファイロがCELINEでクリエイティブ・デザイナーに就任していた、2008年から2018年を「フィービー期」と呼びます。「世の中の女性がどのようなアイテムを求めているのか」を自身のフィルターを通して発表したコレクションはとてもセンスがあるものばかりで、現在でも中古市場で人気を博しています。
フィービー・ファイロの経歴
出典 nytimes.com
1973年にパリで出生後すぐ、両親の母国であるイギリスへと渡英します。ロンドンで育ち、そこで触れてきた歴史的建造物やアート、ファッションといった様々なカルチャーを吸収していきました。
その後、いくつもの著名なデザイナーを輩出している名門美術大学「セントラル・セント・マーチンズ」を卒業し、1997年からは「Chloe」でクリエイティブ・デザイナーに就任していた「ステラ・マッカートニー」のアシスタントとして働くことになります。ステラ氏とは同じ大学の1つ上の先輩であったため、在学時代から親交を深めていました。その彼女がChloeからスカウトを受けた際「フィービー・ファイロも一緒に入社させてほしい」と懇願したことでフィービー氏もまた、Chloeに入社したという経緯があります。
2001年にはステラ氏後任のクリエイティブ・デザイナーに就任。2002年SSのコレクションでデビューを果たします。2008年にCELINEへ入社し、クリエイティブ・デザイナーを務めることになります。実はその数年前、2006年頃に「家族との時間を優先したい」という理由でChloeを退社。約3年もの間、他のブランドへ移籍することもなく彼女の地元であるロンドンで、プライベートな時間を過ごしていました。
そんなフィービー氏がCELINEで復帰するということで、このビッグニュースは世界中のファッショニスタから注目を集めることになります。その後CELINEで彼女がクリエイティブ・デザイナーを退任する2018年までの間、いくつもの名品を世に発表し、多くのファンを獲得しました。
2023年突如、自身の名を冠した新ブランド「PHOEBE PHILO」を展開し、ファーストコレクションをリリース。過剰生産による廃棄物を極力減らすために、需要よりも少ない生産をすることを掲げており、環境へ配慮したサスティナブルなブランドとして注目を集めています。
より詳しい彼女の人物像は下記の記事からチェックすることができます。
絶大な支持を受ける理由とは?
出典 fashionista.com
フィービー氏がCELINEに在籍していた2008年から2018年は通称「フィービー期」と呼ばれ、彼女の退任後は「フィービーロス」とも言われるほど絶大な支持を受けていました。
当時、デザイナーが定着せずにいたCELINEの人気をV字回復させたのはまさに彼女のセンスであり、フィービー氏の手がけるデザインのおかけでで売り上げが3〜4倍にもなったと言われています。長年愛用できるようなシンプルさやミルマルさの他に、これほどまでに人気を得た理由として「時代とは逆行しているアイテムを提案した」というものがあります。
現在では当たり前に街中でも見られるワイドシルエットやコージーなスタイル。当時はスキニーパンツがトレンドに位置付いており、ホットなアイテムでした。そんな中でリリースされたワイドパンツはとても新鮮かつ目新しく、人々の関心を惹いたのです。
彼女の提案するワイドパンツやオーバーシルエットのニット、またマニッシュなアイテムはCELINEをモードなイメージへと一新させました。ものづくりの軸として「自分が着るためにデザインする」があり、それはどのブランドに在籍している時期でも変わらず、信念として持ち続けています。CELINEでは自身を1人の女性として客観的に捉え、全てのコレクションに投影していたと言います。
決して自己中心的な個人主義ではなく、彼女自身が現代社会に生きる女性の中の1人であり「自分が着たいと思える服は、世の中の女性たちも着たいと求めている」ということを理解した上でデザインしているのです。そのようなクリエイティブな思考こそが、パーソナルに寄り添ったアイテムを生み出し、支持される理由と言えます。
フィービー期ロゴの特徴
ブランドを象徴する存在である「ロゴ」。CELINEでは創業された1945年から1960年代まで「馬車」のモチーフがブランドのメインロゴでした。
そこに付随するネームロゴは現在のロゴと比べると文字間隔の広い「CÉLINE」であり、Eの上にアクサン記号(アクセント符号)が付けられていました。ちなみに1960年代から1980年代では「E」「É」「È」の3つがランダムで採用されていました。
1970年代から1980年代の「CELINE」の表記はアクサン記号が取り除かれたロゴに変更。現在のロゴとよく似たものになります。
フィービー氏がデザイナーを務めていた「フィービー期」では再びEの上にアクサン記号が付いた「CÉLINE」が登場。この時期の旧ロゴは「OLD CELINE」と呼ばれることもあり、とても価値のあるアイテムになっています。
2018年以降はアクサン記号のない「CELINE」に変更され、よりスタイリッシュなロゴに統一されています。
映画にも登場
出典 purseblog.com
CELINEほどの老舗メゾンになると映画の衣装や小道具として、作中にアイテムが登場することも珍しくありません。
2011年にリリースされた「クラシックボックス」。時代に左右されないシンプルさはまさにクラシックに相応しいデザインです。こちらは2015年に公開された「マイ・インターン」で主人公である「アン・ハサウェイ」が身に付けていたハンドバッグ。ダークオレンジで品のあるラグジュアリーさは「ファッションECサイトを起業し、若くして成功を掴んだ経営者」という役柄にフィットしていました。
また作中にはCELINEのスリッポンのスニーカーやワイドスラックス、華やかな赤色のパンツなどと同時に、HERMESやDior、BALENCIAGAなど有名メゾンのアイテムも登場しています。
フィービー・ファイロが与えたインパクト
「トレンドに合わせることより、フィービー氏自身がトレンドを作る」というデザインが、世界中のファッション好きの心を掴みます。ユニークなデザインはもちろん、大胆な素材使いや人々の目を惹く多様な柄。そしてシックからカラフルまで幅広い色使いは、私たちの感性にインパクトを与えてくれました。
素材使い
フィービー氏がデザインするアイテムにかかせないのがレザー素材。上質なレザー製品をあしらったバッグやシューズはもちろんのこと、部分的なディテールで採用することも得意としています。以前に発表されたレザーを使った半袖トップスは、スタイリングをシックに引き締めてくれるウィットに富んだデザインでした。
フィービー期の定番ジャケットの1つ、ライダースジャケットも人気があります。無骨な印象を持つアイテムもラムレザーを採用することで柔らかな着心地はもちろんのこと、身体に沿うソフトなシルエットが甘辛なテイストを演出してくれます。カラーバリエーションは王道であるブラックだけでなく、カーキやブラウンも取り揃えているのが嬉しいポイント。
彼女自身ベジタリアンであったそうですが、それでもデザインするアイテムにはレザー素材を使い、ファッションデザイナーという仕事に真摯に向き合いました。
2013年SSに登場した「アグリーサンダル」はフラットサンダルブームのきっかけに。レザーサンダルに装飾されたファーはさりげないラグジュアリーさを醸し出し、当時はとても斬新なものでした。
この他にイエローのファーですべて覆ったパンプスも同時に発表されていて、とても新進的なコレクションとなりました。
多様な柄
バリエーション豊富なスタイリングに柄物のアイテムをアクセント、時にはメインに落とし込むフィービー氏のデザインセンスは秀逸。
トラックパンツのイメージが今ほど「ファッションアイテム」としての認知がなかった2011年SSに、コレクションで発表をしました。トップスはホワイトのタンクトップというリラックスしたアイテムに合わせたのがマルチストライプ柄のトラックパンツ。随所に差し色が見られ、ただのラフ着ではなくモダンかつ上品さを醸し出すムードへと昇華させました。
同じくそのコレクションで発表された、スカーフ柄がデザインされたシャツは当時のトレンドに。柄だけではなく肌触りもスカーフ仕様にすべく、素材にはシルクがあしらわれました。
出典 mings.hk
鮮やかな色使いはセットアップで着るとより見映えし、「カニエ・ウェスト」がアメリカ最大の音楽祭である「コーチェラ・フェスティバル」のステージ衣装として着用したことで、さらに話題になりました。
またランドリーバッグやショッピングバッグによく使われるチェック柄もフィービー氏のデザインによって、スタイリッシュなコートとしてコレクションに登場しました。チェック柄なので一見派手になりがちですが、色味は落ち着いているためレトロなニュアンスを演出。ニーハイブーツと合わせて、すっきりとしたシルエットでスタイリングされています。
ストライプやチェック柄のようなベーシックなものだけでなく、ブラッシュ・ストローク柄と呼ばれる「勢いのある筆の動きで描いた」という、一風変わったデザインも彼女は得意としています。抽象表現主義のアートでよく見られる技法で、エネルギッシュな印象を与えます。
色使い
フィービー氏がCELINEで打ち出す色使いは、派手めなものから落ち着いたトーンのものまで、豊富なバリエーションに長けているのが特徴です。前述したスカーフ柄シャツのようなデザインと色味は人々の目を惹き、スタイリングの主役はもちろんのこと、アクセントでも活躍してくれます。
出典 chikoshoes.com/blog/2017年SSコレクションで登場した左右色違いのシューズはとても斬新なものでした。ブラウン・ブラック、レッド・ホワイト、ベージュ・キャメルなどカラー展開があり、ファッショナブルなムードを演出してくれます。
彼女がデザインするシンプルかつミニマルなテイストに非常にマッチしたシックな色使いも魅力的で、2010年FWではブラックやネイビーをベースとしたアイテムが登場しました。ダークトーンで揃えられたスタイリングは「究極のミニマルスタイル」と言われるほど無駄を削ぎ落としたソリッドな印象に。老舗メゾンに相応しいリュクスなデザインが秀逸です。
アパレル商品だけでなく、バッグや小物類もカラーバリエーションが豊富に揃えられています。キャッチーかつ人気色であるグレージュや、どんなシーンにもフィットしてくれる汎用性の高いブラック。コーディネートの差し色に使えるビビットなピンクやフェミニンなパステルイエローなど、様々あります。またバイカラーなものも登場しているので、自分のスタイルに合ったカラーを選ぶことができます。
フィービー・ファイロが生んだ名作バッグの数々
「肩に羽織る」を定着させたクロンビーコートをはじめ、CELINEのフィービー期にはたくさんの名作が生まれています。その中でもバッグにスポットライトを当てて、ご紹介します。
Luggage ラゲージ
CELINEの代表バッグとして鎮座する「ラゲージ」。発表されたのが2008年頃ですが、実は発売当初はあまり人気がなかったと言います。ですが著名なセレブやファッション業界の人たちが身に付けたことで、たちまち人気アイテムに。カーフとラムスキンを使用した素材は長年愛用することができ、サイズ展開も豊富にあります。
Trapeze トラぺーズ
2009年に発売された、フランス語で台形の意味を持つ「トラペーズ」。ラゲージをベースにして作られたバッグで、同じく台形を逆さまにしたようなフォルムをしています。サイドの面が広く取られたユニークなデザインが魅力。メイクパレットのように例えられることもあるカラーリングは華やかな印象を与えてくれます。
Belt ベルト
ベルトのようなディテールがフロント部分に施された2014年に登場した「ベルト」。上記の2つのバッグに続くCELINEのアイコンバッグとして作られた経緯があります。シンプルな見た目に反して、ハンドバッグとショルダーバッグで使える2WAY仕様。カジュアルなシーンだけでなく、フォーマルなシーンでも活躍してくれます。
Trio トリオ
シーンを選ばない使い勝手の良さがある「トリオ」。3つのポーチが1つにまとまったようなデザインをしています。それぞれはボタンでくっ付いているので単独で使用することも可能。シングルでショルダーバッグとして使ったり、ストラップ部分を外してクラッチバッグ風にラフに持つこともできます。またバッグインバッグとしても使うのもおすすめです。
Classic Box クラシック ボックス
映画「マイ・インターン」でも登場した、2011年に発売された「クラシックボックス」。仔牛の皮を使った通称「ボックスカーフ」を素材に使うことで高級感溢れる貫禄に仕上がります。セレブたちも愛用している、トレンドに流されないシンプルなデザインです。
Trotteur トロッター
フランス語で旅人を意味する「トロッター」は2014年に初登場し、2016年に新たなデザインにブラッシュアップされました。スモールとミディアムのサイズ展開で、丸みを帯びたシルエットが特徴。ゴールドやシルバーの装飾のおかげで、ドレススタイルにもフィットしてくれるショルダーバッグになっています。
Cabas カバ
大容量の収納力があるトートバッグ「カバ」。縦長タイプや横長タイプなど、色々なサイズバリエーションがあります。トートバッグとしてだけでなく、付属のストラップでショルダーやクロスバッグとしても使えるので、スタイリングの仕方も豊富です。カジュアルながらも落ち着いた大人な印象を与えてくれる洗練されたバッグ。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます。トレンドを作るよりも女性のワードローブを大事にしたいという想いから、CELINEのイメージを一新させたフィービー・ファイロ。そして、2018年春夏コレクションを最後にCELINEを去った時には「フィービーロス」現象が巻き起こったほどで、ファッション界への影響は計り知れないものがありました。これだけの影響力のある彼女が手がけたフィービー期のアイテムは、今なお愛されていることにも納得ですね。自身の名を冠したブランド「PHOEBE PHILO」についても、残念ながら現在は日本での展開はありませんが、今後の躍進にも注目していきたいです。
モードスケープではCELINEの買取を強化しています。アイテムの価値を適正に反映し、最高額を見出す査定をいたします。さらに、この記事でも紹介させていただいたように、フィービー期アイテムは特に需要が高いため高価買取が期待できます。CELINEのアイテムを売りに出すか迷っている場合にも、是非モードスケープにご相談下さい。とりあえず値段だけ聞いて検討したいという場合は、LINE査定などで査定額を見積もることも可能です。お気軽にご相談ください。
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MODESCAPEでは、CELINEの買取を強化しています。CELINEでは、近年フィービー時代のアイテム人気が高くなっており、過去作からエディ・スリマンが手掛ける最新アイテムまで、新旧シーズン問わず、査定金額アイテム一つ一つの価値を理解し適正な査定をいたします。お買い取りをご検討の際は、お気軽にご相談ください。
CELINEの買取について
この記事を書いた人
小川剛司 (MODESCAPE 編集部)
ライター・ファッションモデル。学生時代のアルバイトからファッションの世界へ。大手セレクトショップの販売員、ECスタッフを経て、長年携わったアパレルの経験と知識を活かしWEBライターに。数々のファッションマガジンサイトで執筆を行い、メンズ・レディース問わずおしゃれを発信しています。現在は韓国を拠点にモデル活動しており、更なるファッション知識を探求中! Instagram:@t_t_k_k_s_s